安芸津活性化プロジェクトがフィナーレへ「あったか笑顔のまちづくり講演会」開催
安芸津中学校では、1学年次に安芸津町の特産や職業を調べる授業を、2学年次には職場体験学習や修学旅行を通じて、まちの実態や課題について学んでいます。3学年次にはその総括として、地域の人と協働しながら“安芸津町の将来を担う施策”を考えて地域に発信。それが「安芸津活性化プロジェクト」です。
プロジェクトのあゆみ
- 6月 グループワークとオリエンテーション、認知症サポーター養成講座
- 7月 乳幼児ふれあい体験、保育所及び福祉作業所、高齢者福祉施設でのボランティア活動体験
- 9月 まちの課題とその解決策をまとめたグループ別提言会
- 10月 地域の人へ向けたミニ提言会
- 10月30日 文化祭で発表
- 11月14日 あったか笑顔のまちづくり講演会で発表
これまでの活動では文化祭が最終発表の場でしたが、「地域の人へ広く発信できる場があれば」という学校側の声を受け、同講演会で発表の運びに。プロジェクトに関わってきた大人や地域の人たち、子どもたちの活動を知りたいというまちの人が多く訪れ、終始熱気に満ちた会となりました。


さまざまな立場からの視点を生かした
子どもたちならではのフレッシュなアイデア
講演会は、東広島市社会福祉協議会 副会長 兼 安芸津中学校運営協議会 会長の倉本正行さんの挨拶でスタート。「今日の子どもたちの発表を通じて、世代を超えて支え合うヒントを見つけられたらいいなと思います。皆さん、ぜひ温かな気持ちで子どもたちの提言を聞きましょう」という言葉に、会場からは自然と拍手が起きました。

また、安芸津中学校の原田二郎校長先生からは、この場を設けてくれた地域の人たちへの感謝の言葉と、「誰もが安心して暮らせる安芸津町について考えるきっかけになれば」という期待の言葉が寄せられました。
続いて、安芸津中学校3学年主任の下田侑弥先生から概要を説明。これまでさまざまな学習の場を通じて、まちの実態や課題について学んできたこと、その中で自分たちに何ができるのかを考えてきたことなどが語られました。さらに、皆が暮らしやすい地域にしていくためには、いろいろな立場から課題と解決策を考える必要があり、そのためにグループ分けをしたという説明がありました。



以下に、講演会で行われた各グループの提言を抜粋して紹介します。
中学生視点でのグループ発表

「安芸津中学校の生徒数を増やす」
彼女募集中の生徒の声をインタビューとして紹介し、生徒数の格差による恋愛の機会の差について言及。生徒数を増やすためにはどうしたらいいか提言を行った。
解決策としては、
1. 多様な生徒の誘致
→近隣地域から不登校の生徒や外国籍の生徒が登校できる環境を整える。
2. 安芸津中学校の魅力を増やす
→①空き教室を利用して習熟度別の授業を受けられるようにしたり、自習や休憩ができるスペースにして他学年と交流を図れるようにする。
→②生徒会を活性化させる。学校行事を見直して皆が楽しめる行事を増やしたり、校則をなくす。
自分たちにできることとしては、
- 校則の改善。
- いじめのない学校にする。
- 安芸津町の魅力を地域の人に知ってもらう。
- ルールを守る。
といった具体策が挙げられた。
その他にも、
「高齢者と中学生が交流することで活気のある安芸津中学校を目指す」
という別グループの案も発表。



観光者視点でのグループ発表

「まちのキャラクターを作る」
安芸津町を知り、来てもらうきっかけにするためにオリジナルキャラクターを作ってはどうかという案を提言。地域の人と協力して作ることで、世代を超えた交流が生まれて絆が深まり、地域貢献のひとつにもなるという思いも語った。
・実現するためには?
→支所や図書館、スーパーなどの人が集まりやすいところに、ポスターやチラシを貼ったり配ったりする。
・著作権の問題で作成したキャラクターがダメなときは?
→安芸津町のロゴを使って、ジャガイモやカキなどの特産品をブランド化する。
そのほかにも、
「廃校になった旧小松原小学校を有効活用する」
「安芸津町の特産品を活用したスイーツとカフェの提案」
という別グループの案も発表。



子育て・親視点でのグループ発表

「藤三とゆめマートの店長さん!私たちからスーパーな提案があります」
安芸津町のスーパーにおいて、「子どもたちが遊べる遊具が少ない」「一部の場所にスーパーが集まり過ぎている」「通路が狭い」「多目的トイレが少ない」といった問題を提起。解決策を探った。
・子育て世代の意見を調査
→(良い点)利用する客の人数がちょうどよく利用しやすい。
(悪い点)出かけるときの荷物が多くて大変。
・解決策
→子育て世代の人たちが買い物しやすい環境を作る。
(トイレなどの設備が整っている、通路が広い、子どもを預けられる場所や荷物を預けられる場所がある)
・問題点
→予算や場所がなくて新しく建てるのは難しいため、今あるスーパーを利用する。
・自分たちにできること
→プレイルームで使えるおもちゃを作って寄付する。使わなくなったおもちゃを集め寄付する。ポスターなどを製作して子育てに役立つ情報を広報活動する。
そのほかにも、
「安芸津町の公園の課題とその解決策」
「安芸津町の病院の課題とその解決策」
「子育て世代が働きやすい職場環境とは」
という別グループの案も発表。



高齢者・障がい者、支援者視点でのグループ発表

「住みやすい安芸津町を目指して」
点字ブロックや音響式信号が少ない、高齢化が進み施設での働き手が不足しているといった現状の問題点を挙げ、どうしたら解決できるかを提案。
・各施設で利用者の思いを調査
→若い人たちと関われることがうれしい、今ある行事など安芸津町の伝統をつないでほしい、施設のイベントに若い人がもっと参加してほしい。
・自分たちに何ができるのか
→①施設利用者と若い人が関われるイベントを増やす。
②施設、点字ブロック、音響式信号機などの設備の追加を、高齢者や障がい者の代わりに提案する。
・イベントの例としては
→ボランティア、作品づくり、読み聞かせなど。


回を重ねて成長した子どもたちと見守ってきた大人たちの思い
多様な人がつながるまちに
4つのグループの発表には、地域の人がそれぞれ講評を行い、温かな感想を寄せてくれました。また会場では、いずれ劣らぬ素敵なアイデアに感嘆の声があがったり、何度も拍手や笑いが起きたほど。総評を行った東広島市教育委員会の市場一也教育長からは、「今日子どもたちが懸命に投げてくれたボールを、私たち大人が真剣に受け止め、ひとつでもふたつでも実現していけたらと思います。また、今日参加していない1・2年生においては、3年生がやってきたことを引き継ぎ、より広げていってほしいです」とエールが送られました。
中学生らしい若い視点を生かした提言から、元気をもらえる時間となったこの日の講演会。関わった中学生や、長く子どもたちに伴走してきた大人たちの声を紹介します。

この日発表を行った中学生や、
長く子どもたちに伴走してきた大人たちの声を紹介
学校関係者
「普段は総合的な学習の時間のなかで安芸津町について調べるだけですが、今日はこうして私たちの思いを地域の人に伝えられる場となり、とても良かったと思います。安芸津町は小さなまちなので、調べ物をしても資料が出てこなかったり、正しい数値がわからないといったケースにも直面しました。しかしそんな時は先生や地域の人が手を貸してくださり、無事に発表内容をまとめることができました。この学習を通じてまちに対する理解が深まり、地域のことをちゃんと考えていこうという気持ちが生まれました」
安芸津中学校3年 村上歩海さん


「こんなに大きなホールを借りて発表することになると思っていなかったので、今日のスケール感にびっくりしました。私は『親子連れにやさしい理想のスーパーをつくる』案を考えたグループに所属していたのですが、お金や場所といった問題にぶつかり、もっと現実味があるアイデアにできないだろうかと、何度も頭を悩ませました。地域の人に提案するなかで、有効なアドバイスをいただいたり、『それいいね!』と言っていただけて、とてもうれしく充実した時間でした。自分が親になった時の目線も学べて良かったです」
安芸津中学校3年 大田杏奈さん
「回を重ねるにつれ、生徒が成長していくのをすごく実感しました。子どもたちがアイデアを出したり調べ物をする際、私はほとんど口を出していません。自分たちで考え、その内容を地域の人に提案し、さらに助言をいただいて再度考えることで、徐々にレベルアップしていったのだと思います。今日の会は3年生のみの参加だったので、いずれこの提言内容をまとめて1・2年生にも伝え、来年度以降さらにブラッシュアップさせていければと思います」
安芸津中学校 3学年主任 下田侑弥先生


「地域の現状をしっかりと調査し、現実的にできるかもしれない部分までを考え、どの発表もよくまとまっていたと思います。少人数のグループでそれぞれの視点を生かし、全員で発表に取り組めたのは良かったと感じます。子どもたちは、いずれ大人になり地域を担っていく大切な人材。今あるものを受け継ぎつつ、このまちをどうやったら盛り上げていけるのか、今できるところから進めていってほしいです。この先進学や就職でまちを離れたとしても、いつかは安芸津に戻り、生涯かけて地域のために活躍してくれたらうれしいです」
安芸津中学校 校長 原田二郎先生
関わってくれた地域の人
「これまでこのプロジェクトに参加し、子どもたちのアイデアが大人の意見を取り入れてどんどん良くなっていくのを見てきました。はじめはこの発表で大丈夫かな?と心配していましたが、今日は笑いも取り入れつつ、最後は真面目に考察していてとても良いまとめになっていたと思います。今日子どもたちが提言したことを、実際に実現していくのが私たち大人の役目。特産のジャガイモを使ったドーナツの新フレーバーなどはすごく良いアイデアだったし、私から地元の菓子店等に相談してみようと思います。これから後に続く後輩の皆さんは、先輩たちの姿をぜひ見習ってほしいです」
合同会社トモシビファーム 代表 新川隼人さん


「総合的な学習の時間を使った、子どもたちの3年間の学びの集大成を見ることができ、本当に良かったです。発表のなかですごく心に響いたのが、『高齢者も障がい者も地域の財産』という言葉。また、中学生と高齢者や障がい者が交流することを『一緒に遊ぶ』と表現していて、なんと人間力が高く豊かな感受性を身につけているんだろうと感激しました。難しいテーマに中学生なりに取り組んでいて、感心します。似たような視点でも、まったく違った視点でも良いので、来年度以降も同様のプロジェクトを続けていき、活動を広げてほしいと願っています」
東広島市社会福祉協議会 副会長 兼
安芸津中学校学校運営協議会 会長
倉本正行さん
プロジェクトを共に推進してきた行政関係者
「いろいろな人が関わりながら進んできた、安芸津活性化プロジェクト。私たちは地域と学校を結ぶ橋渡しのような役目を務めさせてもらいました。子どもたちが地域の人と一緒になって安芸津町を語り、地域の人は子どもたちと関わることでその思いを知る、互いを認め合ってつながっていく“多世代交流の土台づくり”ができたのではと考えています。今日はプロジェクトの終わりの日ではなく、新たな地域を育んでいくスタートの日。子どもたちにはこれからも地域の行事にたくさん参加してほしいし、地域の人たちにはもっと若い世代の考えを知ってもらえたらと思います。そして私たちは、多様な人たちがつながれる、その出会いの場をこれからもさらに仕掛けていくつもりです」
東広島市社会福祉協議会安芸津支所 主事 髙村真由さん

それぞれの思いが詰まった2025年度の「安芸津活性化プロジェクト」はいったん終わりを迎えますが、この先、後輩たちがこのプロジェクトを引き継いで、より進化させていくことでしょう。最後に、これまでを振り返ったまとめをお届けします。
「安芸津活性化プロジェクト」のまとめ
中学生の変化
ボランティア体験をしたり地域の関係者と話を重ねていくことで、安芸津町の現状や社会情勢などを知り、アイデア(企画)が「こうなったらいい」から「何をすべきか」へ変化。具体的に取り組んでいく様子が見られた。
地域の関係者の変化
地域住民や関係機関も中学生たちの思いを知り、関わってきたアイデアを実現させたいという気持ちに変わっていった。また、中学校が生徒や先生、地域住民、関係者との交流の場になり、挨拶、声掛けなどの新たなつながりが生まれた。
提言内容と地域課題
中学生たちが「あったか笑顔のまちづくり講演会」で地域住民に提言した内容は、安芸津町の住民が抱えている地域課題とつながっていることがわかった。
中学生みずからが地域課題について気付き、解決への具体的なアイデアを考えてきた「安芸津活性化プロジェクト」。住民へ提言したことにより、町で暮らす人たちから大きな共感を呼びました。
今後、彼らのアイデアや思いを、地域住民や専門職の人々が一緒になって叶えていくことで、安芸津町の地域課題が解決していくはずです。来年度以降も同プロジェクトに多くの住民が参加し、学校と連携しながら、さらなる広がりを見せていくよう願ってやみません。

